2019-01-01から1年間の記事一覧
『サーカスの娘オルガ』山本ルンルン いつかのどこかの物語でなく20世紀のロシアを舞台にしている。サーカス、非人道的なイメージ。いまの日本のサーカスに子どもが出演していないのは児童福祉法によるものだそう。ずいぶん清潔。かなり小さい頃にうちの近く…
『こちらあみ子』今村夏子 読み始めは頬をほころばせたまにくすくす笑ったりもしたが、中盤気持ち悪すぎて笑えなくなってくる。これを笑っちゃダメでしょと人間の生まれ持っての倫理観が警告している。こいつを笑っても蔑んでも憐れんでもいけない。周りがけ…
『あひる』今村夏子 通勤と退勤の1日で読めるような軽い文なのにインフルエンザで1週間休養する小学五年生の冬くらい体を支配した。大人という生き物はいない。老成はない。子どもが長く生きているだけ。
『コンビニ人間』村田沙耶香 小学一年の水泳の授業、着替え中にクラスの女の子におまたの見せ合いっこを強要されて泣く泣くタオルをおろしたことを思い出す。 就業規則を遵守しコンビニに殉死したわけではない。コンビニは自我を呼び起こす場所。コンビニ店…
『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』丸山正樹 逆差別や、逆差別を糾弾する当事者の存在など、触れてほしい問題をくまなく拾い上げる。蛇足かと思われた彼女との関係もしっかり回収。主人公はあくまで、コーダの荒井である。続編があるらしく、どおりで荒井…
名作は未来の作品で引用され、パロディされ、意味が付随されていくから、名作なんだな。当時の解釈で足りうると判断されてしまっては残らないんだな。 そう思うたびにあたまによぎった「無礼講」という言葉。なんとかかぶりをふりふり「カーニバル文学」の語…
『仮面の告白』三島由紀夫 まっとうな生の道筋から大きくそれていることを恥だと思い、そう思うことをまた恥だと思い、罪だと思い、出口がない。しつこいほどに終わらない内省。深く深くまで恥じ入って、生真面目几帳面に、こんな繊細に、表現のすべてを尽く…
ベルナドット隊長の夢女子 ド真ん中正攻法でこんなにもおもしろいジャパニーズ傑作アニメーション。
『読みの整理学』外山滋比古 今年に入ってから一度の読みでじゅうぶん楽しめるような本ばかり読んでいた。卒論から解放されたのがよっぽどすっきりしたのか、絶対に頭をつかわないぞという意思さえ感じられる選択の数々。久しぶりにノートを開きながら本を読…
複数枚にわかれたレイヤーを統合する話。
『絶唱』湊かなえ 国民の戦争に対する意欲の上昇に影響を及ぼした作家には「文学者の戦争責任」が突きつけられる。そんな結果を想像しない戦時中は、反戦と読める文章を書くと取り締まられる、文学の力をもって国民を動員することに尽力するよう求められる、…
『TSUGUMI』吉本ばなな 出会った人間のなかで最も読書量の多かった女が、「新品で買った本はもとをとるために6回読む」と言っていた。 文庫本1冊のページのほとんどを割いてひとつの季節を丁寧にかく。そのため、情報の密度が下がる。事件は少ない。そうでな…
この男を一生かけて愛すと誓った。 『恥知らずのパープルヘイズ』上遠野浩平
『パパの電話を待ちながら』ジャンニ・ロダーリ ショートショートは勢いで完飲するために書かれたものではない。物語の区切りが多いぶん、ひとつひとつ読み込めば長編小説よりじっくり読めるはず。かばんに入れる本は1冊にしたいのでそんなことは意識せず速…
粉がついてる。口の周りに ハムカツの。 『るきさん』高野文子 るきさんを理想としてほしい。攻撃性のない軽やかな存在。ちょっと不機嫌な日があってもたいがいのんびりできるってのは難しいことだね。都市の暮らし、しかし在宅勤務だからか、街と生活の距離…
『名もなき孤児たちの墓』中原昌也 読んでいて楽しい、心地いいような文章でもないが、するすると最後まで読んでしまった。しかしそれは決して文章が月並みで親しみやすいものだからではない。むしろ人物の価値観は私たちを突き放す。一つ目の短編を読んだ時…
こんにちは!ねりよちゃんです✨ 読書の感想とおでかけした日の日記を書きます。よろしくおねがいします。 ねりよちゃん