🍽ねんよりびより🍽

読書・散歩の記録。

筆漫画

『午後の曳航』三島由紀夫

昼ドラを蹂躙する子どもたちの漫画。少年たちのグループはもっともらしいことを言ってもよくよく考えるとさっぱり謎な理屈。体が丈夫な子どもはこんなこと考えない。おたくクンの強固な虚構。首領はあたしたちをニヤニヤさせる。

しかし冒頭を振り返ると、大人もロマン的なことばかりのたまっている。でも大人は夢みがちな日々をすっかり日常に溶け込ませてしまう。思想より大事な日常。

いつまでもそれに抗ってはいられないと諦めるには固すぎた。革命を起こす子どもという点ではさながらゆたぼん。

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おかゆくらいまずい飯だけ

『ことばの食卓』武田百合子

この1年は食にまつわるエッセイも読めるようになった。料理のことばといえば、レシピとか、味の感想とか。でもそういうのがほとんどなく、食事の周りをぐるぐるまわっていた。なにもおいしそうなものは出てこなかった。飯がキモイで連想されるヤン・シュヴァンクマイエル武田百合子は彼のように食に取り憑かれている?わけでもなく。子どものときに気持ち悪いものを見ちゃった気になった感覚のまま文章を書いている。ように読めて好き。

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初見でも感じる懐かしさ

『サーカスの娘オルガ』山本ルンルン

いつかのどこかの物語でなく20世紀のロシアを舞台にしている。サーカス、非人道的なイメージ。いまの日本のサーカスに子どもが出演していないのは児童福祉法によるものだそう。ずいぶん清潔。かなり小さい頃にうちの近くにサーカスが来た覚えがあるけど、現実なのか物心がついてからみた夢なのか。バルーンをもらって帰った気がする。サーカスなんて好きに決まってるよね。

山本ルンルン、結末がどうであれ不穏な雰囲気で終始揺さぶってくる。綺麗なお話。しかし慎ましい恋が報われる慎ましいエンドがあってもいいと思ってしまうな。

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終わりなき平成

『こちらあみ子』今村夏子

読み始めは頬をほころばせたまにくすくす笑ったりもしたが、中盤気持ち悪すぎて笑えなくなってくる。これを笑っちゃダメでしょと人間の生まれ持っての倫理観が警告している。こいつを笑っても蔑んでも憐れんでもいけない。周りがけむたがる存在。毎回そんなひとばかりいるのにどの短編も慣れずにずっと気持ち悪い。

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ノリちゃんノリノリ

『あひる』今村夏子

通勤と退勤の1日で読めるような軽い文なのにインフルエンザで1週間休養する小学五年生の冬くらい体を支配した。大人という生き物はいない。老成はない。子どもが長く生きているだけ。

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精密動作性B 成長性D

コンビニ人間村田沙耶香

小学一年の水泳の授業、着替え中にクラスの女の子におまたの見せ合いっこを強要されて泣く泣くタオルをおろしたことを思い出す。

就業規則を遵守しコンビニに殉死したわけではない。コンビニは自我を呼び起こす場所。コンビニ店員としての。コンビニと共鳴することでしか生きられない。悲壮の響きはない。覚ましかけたところで、よりいっそう頑なに閉ざされる。このオチ以外考えられない整いすぎた喜劇。

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必読小説

『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』丸山正樹

逆差別や、逆差別を糾弾する当事者の存在など、触れてほしい問題をくまなく拾い上げる。蛇足かと思われた彼女との関係もしっかり回収。主人公はあくまで、コーダの荒井である。続編があるらしく、どおりで荒井のキャラクターが立っているわけだと思う(続編について調べる限り、本作での荒井はブレブレだそうですが……)。続編、いる?と疑わないでもないが、筆力に申し分無く、読む人間を選ばない癖の無さから、まあおもしろいだろうなと思う。中一の課題図書にしたい。なってそう。この読書体験は後に効いてくるよ。でも義務教育を満了しない限り、大抵の文章は読めないのかもね。

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