🍽ねんよりびより🍽

読書・散歩の記録。

名作は未来の作品で引用され、パロディされ、意味が付随されていくから、名作なんだな。当時の解釈で足りうると判断されてしまっては残らないんだな。

そう思うたびにあたまによぎった「無礼講」という言葉。なんとかかぶりをふりふり「カーニバル文学」の語に辿り着き、ミハイル・バフチンを見つけた。ノートをなくし記憶喪失したが、やっとの思いでミハイル・バフチンに巡り会えた。わたしが知りたいのはこれ!言葉にできない考えをずばり言い当ててほしいし、知らないことを教えてほしい。長年かけて解明したい。先生、わたしは黒板を叩くあんたの背中を睨みつけるぞ。知に火をつけてぜんぶ燃やしたい。うざ。f:id:QQpatron:20191005103806j:image

大きく見開かれた物言いたげな目

仮面の告白三島由紀夫

まっとうな生の道筋から大きくそれていることを恥だと思い、そう思うことをまた恥だと思い、罪だと思い、出口がない。しつこいほどに終わらない内省。深く深くまで恥じ入って、生真面目几帳面に、こんな繊細に、表現のすべてを尽くして己の恥じるところを、ここまで晒し出さなければいけないと考えたのか、かなしいな。半生を総括するのでなくあくまで性感覚についてを一貫して書いており、ナルシシズムを腐らせず昇華させる、他人のまなざしで自分を見つめる安らかさを感じた。

f:id:QQpatron:20190927072104j:image

物語ばかり読んではだめ

『読みの整理学』外山滋比古

今年に入ってから一度の読みでじゅうぶん楽しめるような本ばかり読んでいた。卒論から解放されたのがよっぽどすっきりしたのか、絶対に頭をつかわないぞという意思さえ感じられる選択の数々。久しぶりにノートを開きながら本を読みたい。あんまり何もかもぴんときたようなわかったような気分にさせてくる易しい文章ばかり読んでいるのが怖い。

読むことは過去のひととの対話。書くことは未来のひととの対話。

f:id:QQpatron:20190909222639j:image

文学者の震災責任

絶唱湊かなえ

 

国民の戦争に対する意欲の上昇に影響を及ぼした作家には「文学者の戦争責任」が突きつけられる。そんな結果を想像しない戦時中は、反戦と読める文章を書くと取り締まられる、文学の力をもって国民を動員することに尽力するよう求められる、などの圧力が、でかい規模で組織的に存在した。是か非か、書くことを求められる。書き残したものは誹られる。

書かない責任も問われる。

いま興る文化は東日本大震災以後の文化だ。この時代に生きる者として書かなければいけないこと、読まなければいけないことがある。多く残されるということがひとつの価値だから。文化はひとの不幸のうえに成るけど、それでもいっしょに生きていけばいいと思う。

扇情的な帯に台無しにされてるけどいい表紙です。

f:id:QQpatron:20190829010620j:image

生命力が落ちている

TSUGUMI吉本ばなな

 

出会った人間のなかで最も読書量の多かった女が、「新品で買った本はもとをとるために6回読む」と言っていた。

文庫本1冊のページのほとんどを割いてひとつの季節を丁寧にかく。そのため、情報の密度が下がる。事件は少ない。そうでなければならない。こんなに丁寧な文章を読めないのなら、事の重大さをめくらましに白紙の束を売りつけられても文句が言えないと思わないか。

文庫版あとがきの「もう作者にもさわれないひとつの夏がここに生きている」がおもしろい。修正は要らなくて、書き進めるのみだ。

人間なにかを成し遂げると著しく生命力が落ちる。つまりなにもしていないあたしはぬるぬる生き延びる。正とか負とか善とか悪とか大とか小とかに対し、最も平坦な地に座って、転げ落ちるまねをしたり、やじをとばしたりしている。ひとりでもふたりでも大勢でもない。物語の興らない土地に徐々に近づいてきた。それも特別意味の無いことである。

夏!何が起きてもすばらしい季節。

f:id:QQpatron:20190821002342j:image