正しい馬鹿にはなれない
この男を一生かけて愛すと誓った。
『恥知らずのパープルヘイズ』上遠野浩平
まいにちすくすく
『パパの電話を待ちながら』ジャンニ・ロダーリ
ショートショートは勢いで完飲するために書かれたものではない。物語の区切りが多いぶん、ひとつひとつ読み込めば長編小説よりじっくり読めるはず。かばんに入れる本は1冊にしたいのでそんなことは意識せず速やかに読み切る。
いくつか読んで、ジャンニ・ロダーリがイタリア人だと気づく。ここにある物語の中にはパンナコッタ・フーゴやレオーネ・アバッキオの親が彼らに読み聞かせたおはなしもあるのではないか?彼らの心に幼い頃摂取した「進め!若エビ」や「流れ星を作る魔法使い」の要素が少しでも残っているとしたら、愛しいよね。
被害者の面影
『名もなき孤児たちの墓』中原昌也
読んでいて楽しい、心地いいような文章でもないが、するすると最後まで読んでしまった。しかしそれは決して文章が月並みで親しみやすいものだからではない。むしろ人物の価値観は私たちを突き放す。一つ目の短編を読んだ時の私はかなり混乱していた。「まともな人間はこんなこと言わない。だから私の読みは間違えている」と思う。でも私の読みは間違っていなくて、私がそんなこと言わんやろと思うことをこいつらは言っている。「ただそこにいるだけで、どんな温厚な人間でも殺意を抱かずにはおれぬ佇まい」、「女を監禁して半身不随になるまで暴力を加える」、「サラリーマンという人間は凡庸な事象に対し、決して不満を言わないよう、高度に訓練された人種である」など、目が覚めるような正解が並んでいる。知らないことをいったん保留にできる斜め読みの達人だから読めました。人物たちがストーリーの展開以上に固執してしまうそれぞれの価値観。成長はない。中原昌也の読者に私はふさわしかった。次にこの人の本を読むまでの期間、私はいくつかの読書体験を重ねることに邁進するつもりだ。
ねんよりびよりです。
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ねりよちゃん